■　実物録音　■

今作は全てのシーンが室内で展開されますため、
関連する物、動作の音をできうる限り実物録音してお届けすることを基本線にASMR要素を組み立てていきました。

例えば辞書をめくり、ノートに筆記するシーンでは、複数種の紙、筆記用具を用意し、シーンの印象ともっともマッチするものを選択した上での整音をほどこしております。
揚げ物につきましても、揚げ油の種類、温度、衣、中身の組み合わせをさまざまに試し。
「実際に芋団子を揚げる音」よりもさらに「芋団子をあげている音」としてお伝えできますように目指しております。

■組み合わせとバランス調整■

台所で洗い物等をする一連の音──といったシーンにおいては、あえて連続性を無視して、それぞれの音を個別に、複数録るよういたしました。
その中でもっともバランス良く心地よく響くようにという基準で音源を選択・調整し、「一連の音」としての流れを感じつつお楽しみいただけますよう、整えましたつもりです。

■　胎内の音と耳かき　■

今作での耳かきは胎内の音を聞きながら──という要素が非常に重要となります。
胎内の音に関しましては流石に複数録音をして……というアプローチが不可能でしたので、
医療系を中心とした市販の複数のプロ用ライブラリ群から、耳かきの音と馴染みそうなものたちをチョイスしていき、それらをレイヤーすることで、「耳かきをされながら、反対の耳に聞こえてくるのにベストバランスな胎内の音」としてお届けするよう尽力しました。
耳かきそのものの音については、反対側の耳から胎内の音が低く静かに聞こえ続けていることとのバランスをより活かすべく、いままでよりもダイナミズム、メリハリをさらに明瞭にお感じいただけるラインにて、録音・編集をいたしました。
トータルバランスとして、ひたすらにここちよい耳かきを、最愛の妻のお腹の、いのちの音を聞きながらゆったりとお楽しみいただけるものに仕上がったのではないか、と考えております。

──あやかし郷愁譚においても、全ての音をASMRそのもの、あるいはASMR要素をより引き立てる背景としててお楽しみいただけましたら幸いです。